河野大輔 研究活動の紹介
計測融合型加工システムによる工具刃先運動の転写率の同定
本研究は科研費(特別研究員奨励費21・341)の研究助成を受けました.

概要

 切取り厚さがマイクロメートルレベルになると刃先運動が形状に転写されないことは分かっていたが,その度合いについては明らかになっていなかった,そこで,転写の度合いとして転写率を定義し,刃先運動の測定結果と工作物形状の測定結果から転写率を求める方法を考案した.

 単結晶工具を用いた加工では,指令した刃先運動がほぼ完全に工作物に転写されることがわかった.しかし,多結晶工具を用いた加工では,刃先運動よりも20〜30%振幅の大きな形状が工作物に転写され得ることがわかった.


1.背景 サブマイクロメートルレベルの形状創成
 光学製品の精密金型で,サブマイクロオーダの形状・寸法精度と10〜100 nmRz程度の表面粗さが必要な部品の需要が高まっている.代表的な工作物は,表面に高さ0.1〜10 mmの周期形状を0.1〜1 mm間隔で持つ微細金型である.
 このような周期形状を加工する方法として,工具を目標加工形状に沿って微小運動させて形状を創成する加工法があるが,切取り厚さがマイクロメートルレベルになると,刃先運動が形状に転写されなくなる.


Fig. 2つの形状創成方法

2.目的と方法 刃先運動の転写の定量化
 モデルを用いた加工誤差(転写誤差)補正のために,転写を定量化する.転写の度合いとして転写率を定義し,刃先運動の測定結果と工作物形状の測定結果から転写率を求める方法を考案する.転写率は正弦波形状のシェーパ加工における刃先運動と工作物形状の全振幅比と定義した.

Fig. 計測融合型の加工システムを用いたフィードフォワード型形状加工法


Fig. 転写率の定義


3.結果 
 単結晶・多結晶ダイヤモンド工具を用いて無電解ニッケルとアルミニウム合金を加工した場合の転写率を調べた.単結晶工具を用いて無電解ニッケルとアルミニウム合金を加工した場合は,指令した刃先運動がほぼ完全に工作物に転写されることがわかった.しかし,多結晶ダイヤモンド工具を用いて無電解ニッケルを加工した場合は,過切削と切り残しにより,刃先運動よりも振幅の大きな形状が工作物に転写されることがわかった.