河野大輔 研究活動の紹介
接触剛性の解析に基づく工作機械マウントの設計論の構築
本研究は科研費(若手研究(B) 24760104)並びにマザック財団の研究助成を受けました.

概要

 工作機械の設計において,支持部の剛性は機械の低周波数域の動特性に大きな影響を与えるが,動特性を考慮した支持部の設計は行われていない.これは支持剛性がどのようなメカニズムで決まるかが明らかでないためである.そこで,接触面の剛性を考慮することで,支持剛性のモデル化を行った.さらに,モデルに基づいて,工作機械のロッキング振動の固有振動数を調節する方法を考案した.

 支持剛性のモデルとしては,接触部の剛性(接触剛性)と部材の剛性(材料剛性)を直列に結合したモデルを提案した.このため,様々な材料に関して,接触面に平行な方向の接触剛性と垂直な方向の接触剛性を測定した.また,鉄鋼材料に関しては,コンクリートと接触した場合の接触剛性を測定した.その結果,コンクリートの剛性が金属の剛性と比較して非常に小さいことがわかった.支持剛性のモデルに基づいて,ロッキング振動の固有振動数を調節する方法を提案した.ここでは,固有振動数を最大化することを目標とした結果,横型フライス盤において,最も低い固有振動数をもつロッキング振動の固有振動数をバランスよく増大させることができた.


1.背景 工作機械のロッキング振動
 工作機械での加工において,主にテーブルの駆動力とその反力などでロッキング振動と呼ばれる低周波数(多くの場合30 Hz以下)の振動が発生し,問題となる.ロッキング振動には工作機械の支持部の剛性(支持剛性)が大きな影響を与える.しかし,工作機械の設計において,機械の動特性を考慮したマウントの設計は行われていない.これは支持剛性がどのようなメカニズムで決まるかが明らかでないためである.

Fig. 工作機械のロッキング振動

2.目的と方法 支持剛性のモデル化
 過去の研究により,床とマウント間など,接触部の剛性(接触剛性)が支持剛性に影響を与えていることは報告されていた.そこで,接触剛性を考慮して支持剛性をモデル化する.さらに,モデルに基づいて,ロッキング振動の固有振動数を調整し,振動振幅を低減する支持部の設計法を考える.支持剛性のモデルでは,接触剛性と部材自体の剛性(バルク剛性)を直列に結合した.
         


Fig. 接触剛性とバルク剛性を組み合わせた支持剛性のモデル



3.結果 
 鉄鋼材料に関して,接触面に平行な方向の接触剛性と垂直な方向の接触剛性,およびそれぞれの方向の分布剛性を測定した.また,鉄鋼材料がコンクリートと接触した場合の接触剛性と分布剛性を測定した.その結果,コンクリートの分布剛性が金属の分布剛性と比較して数十分の一であり,非常に小さいことがわかった.
 支持剛性のモデルに基づくと,接触剛性は荷重と正の相関があるため,支持剛性は荷重とともに増大するが,ある荷重からは剛性が飽和してしまう.そこで,支持剛性がなるべく飽和しないようにマウントを配置することでロッキング振動の固有振動数を最大化する方法を提案し,横型フライス盤を用いて検証を行った.すると,提案した方法により,X軸まわりとY軸まわりのロッキング振動の固有振動数をバランスよく増大させることができた.



Fig. 接触剛性の測定例



Fig. 実験に用いた横型フライス盤



Fig. マウント配置と固有振動数の比較