京都大学大学院工学研究科
マイクロエンジニアリング専攻
精密計測加工学研究室

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研究紹介

炭素繊維強化プラスチックを用いた主軸の設計

主軸は工作機械の主要要素部品であり,その機械的・熱的特性が加工に大きな影響を与えることが知られている.炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を主軸シャフトに使用することで,高剛性・低熱膨張な主軸の実現を目指した.
本研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構「新構造材料適用省エネ型工作機械の研究開発」プロジェクトにより実施されました.

支持減衰付加によるロッキング振動の低減

テーブルなどの加減速によって生じる低周波振動はロッキング振動とよばれ,加工能率低下の原因となる.ロッキング振動には支持部の振動特性が大きく影響するため,支持部の減衰を増加させることがロッキング振動の抑制に有用である.そこで,支持剛性を低下させずに支持減衰を増加できるダンパを開発した.
本研究は日本学術振興会 科学研究費補助金 JP17J00200の補助により実施されました.

工作機械据付のためのロバストなレベル誤差推定方法

長いベッドを持つ工作機械は,複数の支持部を用いてレベル調整を行うことで、ベッドの変形を補償する.従来は,熟練した設置者が試行錯誤的な方法での経験に基づいてレベル調整を行っていました.そこで,ノイズにロバストで定量的なレベル調整法を提案しました.この方法は,支持部の荷重変化と支持部の長さ調節量の関係をモデル化し,荷重センサのノイズを考慮したことで,実用的な荷重センサを用いて提案手法を実装することができました.
本研究は日本学術振興会 科学研究費補助金 JP17J00200の補助により実施されました.

低剛性工作物のオンマシン剛性測定システム

加工時の相対振動の低減のために,動剛性測定は重要である.本研究では,圧電素子への印加電圧と加振力を測定し,等価機械モデルから工作物の変位を推定する方法を提案した.その結果,変位測定センサ必要としない,工作物の機上剛性測定システムを実現した.

熱変位を許容値以下に抑え,冷却エネルギを最小化するon-off冷却方法

工作機械のエネルギ消費で冷却システムが占める割合は無視できない.最新の工作機械に広く搭載されている,ヒートポンプ型冷却システムは任意の温度に冷却液温を調節できる一方で,消費エネルギが大きいという欠点がある.本研究では,熱変位の低減と冷却エネルギの削減にあるトレードオフ関係に着目し,熱変位を許容値以下に抑えながら冷却エネルギを3割程度削減できるon-off冷却方法を提案した.
本研究は日本学術振興会 科学研究費補助金 JP17J00200の補助により実施されました.

真実接触面の3次元形状測定に基づく接触面の表面性状の設計法

切削加工面に残るカスプを交差させ接触させることで,真実接触面の分布を管理し接触剛性を向上させる,Cutter mark Cross(CMC)法を提案した.今後,CMC法を一般の切削加工面の締結部に応用するため,表面性状を算出する方法を検討する.

Directed Energy Depositionにおける造形物の形状精度を保証する積層手法

Directed Energy Deposition(DED)法は,ノズルから供給される金属粉末をレーザによって選択的に溶融・結合することで積層する金属積層造形法である.この技術の産業応用には,造形物の形状精度の保証が不可欠であるが,積層条件によっては造形物の形状精度が悪化する場合がある.そこで,積層条件を試行錯誤的に決定することなく,造形物の形状精度を保証できる積層手法を提案した.

微細加工面の評価方法に関する研究

加工条件を決定するために,加工面の良否が判定されます.良否の判定基準には,表面粗さなどの定量化された指標だけでなく,光沢や色味といった,人の直感に基づいた指標(官能指標)もあります.本研究では,官能指標を調査し,これをもとに加工面を定量的に評価することを目的としています.

滑らかな送りを実現する直動転がり案内の設計のための摩擦力変動のモデル化

本研究では,摩擦力変動の観点から転動面性状を設計する指針を提案するため,1つの球が2転動面間を転がる場合の摩擦力変動を算出するモデルを提案した.そのモデルにより摩擦力変動の波形,波長を再現でき,振幅を実験値の30%以下の差で推定できた.結果,案内の全体の摩擦力は球1個1個の摩擦力の和によってあらわされることが分かった.

静電気力と超音波振動を用いたナノブラスト研磨用砥粒粒径の均一化

ナノ粒子を高速で噴射できれば,Ra 1 nm 程度の仕上げ面粗さと加工装置の単純化を両立させた研磨手法を実現できる.仕上げ面粗さを小さくするには,砥粒径を小さくする必要がある.しかし,自然状態でナノ粒子は凝集することが知られている.本研究では超音波振動と静電気力を用い,ナノ粒子の凝集粒子の粒径を小さくしかつ均一化する方法を検討し,凝集粒子の粒径の均一化の可能性を示した.

非接触荷重発生装置を用いた工作機械主軸の振動特性の解析


単粒子研磨の原子スケールシミュレーション

研磨加工は古くから用いられてきたが,プロセス根本の理解につながる研究は多くない.分子動力学シミュレーションを用いた研磨加工の再現が取り組まれているが,解析できるスケールに上限がある.そのため,研磨加工のプロセス理解には,より大きなスケールで解析を行う必要がある.本研究では,Quasi continuum methodを用いたシミュレーションにより,単粒子研磨における表面形状の解析を行った.